てんかんの症状・診断・治療

てんかんとは

てんかんとは、「てんかん発作」を何回も繰り返す脳の病気です。

 

脳には非常に多くの神経細胞があります。これらは通常バランスよく活動しています。

 

ところが、神経細胞の一部に異常な興奮が発生して、周りの神経細胞に拡大したり、脳全体に広がることがあります。
その結果、てんかん発作が起こります。てんかん発作があることが、てんかんという病気の大きな特徴です。

 

てんかんはほうっておくと、次のような危険性があります。

  • 発作から事故につながる
  • 脳の機能に影響を及ぼす

早期に発見して、適切な治療を受けることが大切です。

 

以下、このページを読み進めていただくと、てんかんの症状と診断、そして治療について、ざっくりとお分かりいただけると思います。

てんかん患者は全国に100万人

てんかん患者は、全国に100万人いるといわれています。
これは、1型糖尿病や関節リウマチなどとほぼ同じくらい多い病気です。
予想以上の多さに驚かされる人もいると思います。

 

てんかんはどの年代でも発症しますが、特に多いのが小児と高齢者です。

 

小児の場合は、胎児の時の「脳の形成異常」、あるいは出生後の細菌やウィルスの感染による「髄膜炎」や「脳炎」などから発症することがあります。

 

高齢者の場合は、「脳卒中」や「脳腫瘍」などの合併症として、てんかんが起こるケースがあります。

 

年齢に関係なく、原因がはっきりしないてんかんも多くあります。
てんかんを遺伝する病気と考えている人も多いと思いますが、遺伝と関係のあるてんかんは全体の1割未満です。

てんかん発作

てんかん発作というと、「突然倒れて全身にけいれんを起こす」というイメージがあると人も多いと思います。
しかし実際は、周りの人が気づかないような小さな発作を起こすことも少なくありません。
「泡を吹いて倒れる病気」という考えは昔の話です。

 

神経細胞の異常な興奮が、脳全体に広がると、けいれんなどの大きな発作が起こりますが、異常な興奮が脳の一部だけで起こっている場合は、その部分が司る機能に関わる症状だけが現れます。

 

てんかん発作は、同じような発作を繰り返し起こすことが特徴です。発作のタイプには次のようなものがあります。

 

てんかん発作の例
興奮した部位が司る機能 症状例
運動 体の一部が連続して動く
感覚

手足がしびれる
ない音が聞こえる
光や模様が見える
奇妙な匂いがすると感じる

意識 動作を止めてぼんやりする
記憶

記憶がなくなる
昔の記憶が現れる

感情

恐怖感が出る
寂しくなる

 

てんかんが疑われるケース

体の震えなどが起こるとてんかんを疑う人が多いのですが、他の病気も可能性もあるので早合点しないことです。
また、記憶障害、恐怖感といった感情が繰り返し起こるならば、認知症や精神疾患と間違われることがあります。

 

てんかんが疑われるのは、同じ症状を何度も繰り返す場合です。神経内科や脳神経外科、精神科などを受診してください。小児の場合は、小児科を受診してください。

 

てんかんの重要な条件は次のとおりです。

  • 慢性の脳疾患であること
  • 神経細胞の過剰な電気反射(脳波の異常)があること
  • 反復性の発作があること

 

ぼんやりする、無意識に体の一部が動くなどを繰り返す場合は要注意

てんかんの原因

 てんかん発作は、脳に原因があって起こる病気です。脳の神経細胞が過剰な電気を出してしまうことに問題があります。頭部外傷や脳出血など、脳に関わるさまざまな内因や外因がてんかんを引き起こします。

てんかんの診断

まずは問診

てんかんの診断でまず行われるのは、時間をかけた「問診」です。
次のことなどを詳しく聞かれます。

  • 発作の前触れの有無
  • 発作の起こった時間や起こり方

 

発作の前触れは、脳の興奮の部位を調べるための重要な情報です。具体的に伝えると良いでしょう。
代表的な前ぶれには、

  • 上腹部の不快感
  • 実際には見たことがないのに見たことがあるように感じる「既視感」を繰り返す

などがあります。

 

問診には、周囲に居合わせた人の情報も役立ちます。

 

実際の問診の例

前触れの症状はありましたか?

「おなかの上の方がムカムカしました。」

発作はいつごろ起きましたか?

「昼3時頃です。」

どのように起きましたか?

「左を向いて全身が痙攣しました。」

どのくらいの長さ続きましたか?

「1分間くらいです。」

発作の時、意識はありましたか?

「ありません。発作のことは覚えていませんでした。」

 

脳波検査

問診の次に大切なのは、脳波検査です。
頭部に電極を取り付け、脳の神経細胞が出す微弱な電流を捉えて記録します。
脳波で次のことが分かります。

  • 健康な人→緩やかな波形
  • てんかん患者→発作が起きてない時でも異常な波形が現れることがある

 

脳波検査は治療前に必須の検査とされています。
ただ、てんかん患者でも、脳波が正常な場合もあります。

 

入院して診断することもあります

問診や脳波検査で診断がつかない場合や、薬によると治療で発作が抑えられない場合、入院して数日間連続して脳波を調べる検査が役立ちます。
ビデオで発作の様子を捉える検査も普及してきています。
発作の状態と脳波を見ながら、神経内科、小児科、精神科、脳神経外科など複数の医師が診断を確定し、治療方針を決めるのが理想とされています。

てんかんの治療

抗てんかん薬の服用

治療の基本は「抗てんかん薬」の服用です。約7割の患者は発作をコントロールできます。
小児の場合は、大人になると発作が出なくなることがありますが、大人の場合は原則として生涯にわたって服用します。
高齢者の場合は、少量の薬でも十分な効果が現れます。

 

抗てんかん薬の副作用

抗てんかん薬で次のような副作用が現れる場合もあります。
前もって担当医の説明を十分に聞きましょう。

  • 服用開始から2ヶ月くらい→発疹や発熱
  • 薬の量が増えるにつれて、眠気やふらつきが現れる

このような副作用が現れり場合は、担当医と相談して服用の仕方を決めましょう。
自己判断で服用をやめないようにしてください。

 

手術

抗てんかん薬で抑えられない場合、手術が行われることもあります。
重要な外科手術となりますので、担当医やてんかんの専門医と相談するのが良いでしょう。

てんかんと生活

 てんかん発作は抑えられないと考えている人も多いと思いますが、大多数の患者は適切な治療で、健康な人と同じような生活を送ることができます。
一定の基準を満たせば、

  • 車の運転
  • 妊娠、出産、搾乳

も可能です。
 ただ、小さな発作が大きな事故につながる場合もありますので、受診せずに放っておいたり、治療を諦めたりしないことが大切です。

 

 てんかん発作を持つ人は、薬である程度コントロールできるものの、常に発作が起こるかもしれないという恐れを抱きながら、生活しなければなりません。また、発作により、学校生活の制限、仕事の制限、運転、結婚、妊娠、出産などの問題を抱えています。
 本サイトが、てんかんという病気を知っていただくきっかけになれば幸いです。てんかんという病気を、社会でどのように支援していくか、社会生活や日常生活の中でどう対処していくか、私も、本サイトの制作を通して、考えていく所存です。